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で、かれらは四、五人のチームを作る。そして、音楽と踊り、またカミの伝承詞章を持ち、それらを駆使しつつカミゴトを多彩にくり広げ、それにより諸種の神霊をもてなし、イエの側の祈願、あるいは感謝の念を伝えてやる。これはほとんど韓国のクツをおもわせるが、そこになお、いくつか験力を誇示するかのような呪術的な所作が加えられる(後述の「開紅山」「殺錘」など)。
貴州省の儺戯の全貌が知られていない現状では、どこの地域のものが典型というわけにはいかないが、各種の儺戯のうちでもいちはやく国内外の識者に知られたのが徳江県の儺戯で、その概要は度修明氏の「貴州省徳江県トゥチャ族の仮面劇」(『中国少数民族の仮面劇』一九九一年)や田仲一成氏の『中国巫系演劇研究』(一九九三年)で知ることができる。とくに田仲氏のものはわたしが今回みた「過関然」の基礎資料を紹介していて、参考になった。ただし、田仲氏のばあい、一九九〇年当時の現地の開放度という時間的な制約から、儺戯つまり「あそび」の場にはのぞむことが許されず、主として祭儀の分析に重点が置かれていた。

冉瑞強のお祝いの場

貴州省徳江県青竜鎮橋頭村香樹園の冉氏宅では、九歳になる男の子瑞強君が健康に育つことを祈願して儺戯「過関然」をした(図?写?)。担い手となった土老師はもともと穏坪村に住んでいた張毓福氏(写?)ほか五名で、期間は三日間であった。この土老師らは徳江でもなかなかすぐれた巫であるらしく、実際、その儀礼のひとつひとつはみごたえのあるもの
?張毓福氏が牛角を吹いていた天に祭儀を伝える開壇

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?過関。土老師の右に立つのが冉瑞強君九歳。
この筒をくぐり抜けると然を完全に落とすことができる

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図?冉氏宅内の祭場

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